セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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今月7日発売の集英社「すばる」2月号に小説を書きました。
タイトルは「目の中の水」です。


例によってうまいこと内容を紹介しづらい小説なのですが、
地図、自転車、洪水、あと眼科のことが絡んできます。
三十路男のものがなしさみたいなものもちょいと。
いろいろ入れ子になっている小説なので、じっくりお読み頂ければ大変嬉しいです。
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  告知が遅れてしまいましたが、現在発売中のすばる2012年6月号(集英社)に董啓章「地図集」の書評を書きました。お目通し頂ければ幸いです。


  董啓章は1967年生まれ、香港の小説家です。
表題作「地図集」は、テキストの堆積によって、(香港にとてもよく似ているけど香港と同じと言っていいかどうかは分からない)ある土地の丸ごとを描こうという野心的な構成で、登場人物が誰であらすじがこうでなどといった物語の枠組みはもとより存在しておりません。たとえば「ハザール辞典」や「見えない都市」に似た試みと言えるかも知れません。
  率直に言って自分の中国文学の知識はごくごくわずか、きわめて断片的なものなのだけれど、それでもこういう作品が香港で書かれていることには驚いたし、不勉強を恥じました。これはきちんと先行する文学の成果を踏まえ、消化した上で書かれたテキストです。また、いわゆる大陸の中国と香港の文学状況にはいったいどういう違いがあるのか(かつてどうだったのか、今はどうなのか)、あらためて興味をそそられました。
  知的なテキストの遊戯にご興味をお持ちのかた、ぜひ、ご一読を。


  もう一つ、これは書評の末尾にも書いたことですが、本書が原書から直訳された初の香港文学であると言うことで、関係者各位の熱意と尽力に心から敬服します。あまり意識されないことかも知れませんが、ごく一部の外国語を除いては、原典からの直訳というのはなかなかないことだと思うのですよ(なにしろ底本がどれなのかよく分からないことも多い)。まぁ訳者の専攻がフランス語だからフランス語からの重訳なんだろうなあ……みたいな想像をするしかないこともしばしばあって。
  なにしろすさまじい変化を遂げている中国文学のことですから、こういう試みがどんどん為されることを期待したいですね。
  

  思えば、ほんの20年前、初めての中国旅行で買った日本語訳の短編集に収められていた作品は、まだバリバリの社会主義リアリズムだったんですよ。若者の水着での川遊びが「大胆だ!」と話題になったらしい張抗抗の短編「夏」が、1980年の作品ですからね。そこからたった20年で上海ベイビーですもん。時間の遠近法が狂ってるんじゃないかと思えるほどの激変ぶりです。その一方で高行健みたいな韜晦な心理小説や莫言みたいな大胆な物語の試みも同時に存在しているわけで、中国からはまだまだ面白い小説が出てくるだろうなと思っています。
  文学もまた社会と無縁ではいられない以上、世界でいちばんアクティブな地域の文学が相応に沸騰するのは当然なんでしょうけれど。

地図集地図集
(2012/02/21)
董 啓章

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すばる 2012年 06月号 [雑誌]すばる 2012年 06月号 [雑誌]
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赤い高粱 (岩波現代文庫)赤い高粱 (岩波現代文庫)
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告知が遅れてしまったのですが、今月7日発売の集英社「すばる」3月号に小説を書きました。
タイトルは「東京の長い白夜」
2011年の初夏から秋にかけての東京東部の低地を舞台にすえた、不眠に関わるものがたりです。
久しぶりに、ちょっと音楽のことが絡む内容になりました。
小説の内容をご紹介するのは難しいのですが、
面白い小説に仕上がったのではないかと思っています。
ご一読いただければ嬉しいです。


原稿用紙換算で130枚ちょっとなので、短編と言うには少々長いですね。
短編・中編・長編という言葉の定義はあんまり厳密じゃない気もしますが。
どうも大変お久しぶりですセガワです。
なんかもう完全に日々のクッダラネエ雑文はツイッターに移行してしまいましたね。
ツイッターの方を覗いてらっしゃる方はご存知と思いますが、セガワは元気です。


で、そのツイッターの方ではもう告知したのですが、
集英社の文芸誌「すばる」9月号に短編小説を書きました。
「小説すばる」じゃなくて「すばる」の方ですのでお気を付け下さい。
タイトルは「五月、隣人と、隣人たちと」。
むかし書いた「五月、隣人と」とは関係ないです。
北赤羽だの中野富士見町だの新江古田だの篠崎だの、
東京の微妙な(失礼)地名がたくさん出てくる小説です。
本筋とはあんまし関係ないんですが、なにせ短編なので内容の紹介もしづらいですしねえ。


前から考えていた話なのですが、やはり、あの震災のことを交えずにはいられませんでした。
読んで頂ければうれしいです。
ツイッターの方ではすでに告知いたしましたが、今週の週刊文春に書評を書きました。
サーシャ・スタニシチ「兵士はどうやってグラモフォンを修理するか」(白水社)。

兵士はどうやってグラモフォンを修理するか (エクス・リブリス)兵士はどうやってグラモフォンを修理するか (エクス・リブリス)
(2011/02/11)
サーシャ スタニシチ

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自分とほぼ同年代のバルカン出身の作家ときてはまったく自分好みで、実に興味深い小説でしたよ。
お話を持ってきて下さった編集さんに感謝です。
ってか編集さんのアンテナの高さにはちょっとびっくりしました。
小説の内容は拙稿をお読みいただくとして、ここでは、書評には使えなかったことをつらつらと。


-------- ☆ --------


旧ユーゴは2回旅行しています。
1回目はデイトン合意後、ユーゴ情勢が小康状態を保っていたころのことで、
スロベニアからクロアチア経由でセルビアに至りました。
まだ国際列車が走っておらず、ところどころバスに乗り換えながらの旅でした。
ベオグラードには破壊された建物が点在し、人も待ちもちょっとくたびれた雰囲気でしたが、
それでも結構な数の人が街路に繰り出していて、夕刻になればいっそう数を増したことを憶えています。
この翌年には、NATOによるベオグラードの空爆が行われました。
2回目は5年ほど前、バルカンを旅するかたわら、セルビア在住の合気道仲間を訪ねたりしました。
意外や旧ユーゴには合気道の愛好家が多いのです。
だいぶ街は華やぎを取り戻していました。
いろいろな生活のご苦労があることは、合気道仲間からも聞きましたが。


本作中にはコンピューター・ゲームがときおり顔を出しますが、
旧ユーゴで普及していたのがコモドール64というのはちょっと興奮しました。
日本ではあまり流行らなかったけれど、欧米ではホビーユースのパソコンとして結構普及していたようですね。
日本のMSXみたいな位置づけでしょうか。
R-Typeを移植してしまったツワモノもいたらしい。
テトリスとかバルダーダッシュとか(作中では『ボルダーダッシュ』となってましたが)、
登場するタイトルが懐かしくてしんみりします。
旧ユーゴの同世代と、まさかこんなところで共通の話題があったとは。
以上、三十路未満オコトワリの話題でした。


どうしても思い出さずにいられなかったのは、エミール・クストリッツァ監督の諸作品ですね。
アンダーグラウンドももちろんですし、ユーゴ崩壊の経緯を追った「ライフ・イズ・ミラクル」も。
特に後者、ユーゴ最後の代表チームが出たサッカーの試合は非常に本作のイメージに近く、
黒いユーモアに満ちた戦場でのサッカー試合で想起せずにはいられなかった情景でした。
素晴らしい映画なので、強くお勧めします。

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スラブコ・スティマチ、ナターシャ・ソラック 他

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-------- ☆ --------


ともあれ、こういう非エンタメの海外小説の翻訳は本当に大変だろうなと思うのですよ。
映画化でもされない限り(されても?)よく売れるとは思いがたいジャンルですし。
でも、僕は大好きなのです。
翻訳と出版のご苦労、どちらにも頭が下がります。
こういう人たちのおかげで、僕は「死者の軍隊の将軍」や「族長の秋」や「愛する大地」や
「供述によるとペレイラは……」や「蟹の横歩き」や「紅いコーリャン」を読むことができました。
原書で読めれば最高なのでしょうが、
これらの作品を読むためにはアルバニア語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、中国語を
小説を読めるレベルで習得しなければならず、ちょっとそれは簡単ではない苦労です。
なので、本作のような小説が売れて、次に道を開くわずかな手助けが出来れば嬉しいですね。


アーいつか「大いなる冬」の邦訳が出ないかなー(独り言)。
できればアルバニア語からの直訳で(独り言)。

segawashin

Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
ホームページはこちら。
www.segawashin.com
ツイッターはこちら。
http://twitter.com/#!/segawashin

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