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セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

 たいへんご無沙汰しておりました。ブログを書くのはなんと四ヶ月ぶりですが、セガワは元気にやっております。長編を書いたり論文を書いたり海外に行ったり、まぁいろいろ多忙だったとか言い訳はできるんですが、実際がところ書く気になればブログ書くぐらいの時間は捻出できるんですよね。ただ、どうもネットに文章を書くという行為について思うところがありまして。
 そのことについて語る前に、ちょっと寄り道をします。



 セガワがツイッターというものを知ったのはきっかり一年前のことです。昨年夏の衆院選で政権交代があって、そのときとある新聞社が自社のツイッターで「下野なう」といういささか軽率なツイートを飛ばし、「なう」っちゃなんじゃいと首を傾げたことを憶えているからです。そのときはちょいと調べて意味が分かって、ははァこれがオバマもすなるツイッターというものかと得心したていどにとどまっていたんですが、あれからほんの一年、ツイッターはえらく世間に広まってしまった感がありますね。じっさいセガワの周辺の人たちもずいぶんやっておりますし、芸能人や著名人がアカウント持っていることも珍しくはないですし。

 まあそれはそれとして。
 多分セガワはツイッターはやらないだろうなと思っています。

 理由は一つ、どうもツイッターは便利すぎるような気がしてならないのですよ。なににとって便利かというと、自分の文章を書くという欲求に対して。ツイッターの一回の文章量は140文字なんだそうですが、そうとなれば自分の文章は細かくぶつ切りにしてその都度発信してゆくしかないわけで、これが、どうも、セガワにはおっかない。端的に言えば、自分が文章に対して振り向けるエネルギーを細切れにして吸い取られちまうんじゃないかと思うんですよ。ツイッターごときでやる気をなくすようでは底が知れると言われればそれまでですが。
 もちろん、ツイッターの即応性やコミュニケーションツールとしての優秀さなどまでを貶めるつもりはないんです。ただ、そういう利点があってなお、ツイッターに文章を吐き出してゆくのは、セガワには、おっかない。まして、そこに何らかのレスポンスがあれば、これは紛れもなく「心地よい」感覚につながってしまうと思うんですよ。この心地よさは怖いですよ、自分の行為を認めてもらうということは赤ん坊に取ってすら快いことなんですから。それは、コミュニケーションやおしゃべりの場においてはとても有効に働くことなんでしょうけれど、因果なことに、モノ書かねばならぬセガワにとってはそれは少々阻害的な作用を及ぼすんじゃないかと危惧しています。
 少なくとも、モノ書くことを志している立場のかたであるならば、ツイッターはお止しになった方がいいんじゃないかと思いますね。思惟や情動はうかうかとさらけ出さず、ぐっと腹の奥に押し込めておいた方がいい。まして、ツイッターに文章を発信していってそれをまとめて小説にしようなど、そんなことは間違っても考えない方がいいと思います(*)。落書きをいくら描き散らしても、それをつなげて漫画にならないのと同じことで。

(*: 商売の方便としては大いにありだと思いますけれどね。140文字で綴られた恋の物語、とか、そろそろ出てくるんじゃないでしょうか)。


 結局のところ文章を書くという行為とは、頭の中でグニャグニャゴニョゴニョ蠢いている個人的な思惟のなかから他人様にお出しするに値する上澄みを注意深くすくい取って、もっぺん煮詰めて、余分な灰汁を取って言葉に変換するという作業なんじゃないかなぁと思っています。少なくとも、セガワにとっては。
 で、その原材料になるものは、精神の内奥にしずしずと濃縮されてゆく日々の生活と日々の思考の丸ごとなのであって、それが腐敗であるのか発酵であるのかはともかく、とまれせっかくの不健康な精神的衝動を細切れな手軽な自己表明によってガス抜きしたくはない。このあたりのことが、このところブログがすっかりご無沙汰になってしまった理由にもつながってゆくのですが。



 それにしても、ネットに個々人が振り向けるリソースって年々縮小してるような気がします。個人でホームページを作るのがはやったのがたぶん2000年前後、ブログはその3年後ぐらい、mixiのようなSNSはさらにその3年後ぐらいでしょうか。そして更に3年、ツイッターが普及。それぞれに要する労力は明らかに低下していますね。
 もちろん、新たなツールが出てきたことでそれ以前のツールが廃絶されてしまうわけではなくて、今なお面白いブログやHPを作ってらっしゃる方もたくさんいるんですけれど、多くの場合はそこまで熱心に自己を発信する理由がないのかもしれません。自己表現はもう少し手軽でいい。そういうミニマルな自己表現、おそらくは携帯メールのやりとりと言ったあたりですでに実現していたんでしょうが(自己表現の一環と考えれば即レスしないことにキレるという現象も理解できます)、その感覚を無制限に拡張するとツイッターに行き着くのかもしれません。
 なにしろメールと違って、つぶやくには相手すら必要ないんですから。



 まあそういうわけで、ほとんど読者もいないブログではありますが、更新はこれまでにもましてのんびりな感じになると思います。新作の告知などは必ずここでいたしますので、気長にお待ちくださいませ。秋までには一冊お目にかけることができるかと思います。
 あ、でも、こないだサンティアゴ・デ・コンポステラを巡礼してきたのでそのことはここで書こうと思います。FEVE (Ferrocarriles Españoles de Vía Estrecha; スペイン狭軌鉄道)がお好きな方は必見です。
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segawashin

Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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