セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
あわわ、気が付いたら二ヶ月もブログ放置してた。
元々マメなブロガーじゃなかったですけど、これは酷いですね。


先日、某大学の新入生オリエンテーションでお話をして参りました。
教養課程の大切さみたいなことを経験を交えて、みたいなタテマエだったのですが、
結局小説の事だの旅行の事だの映画の事だの、自分の大学時代のことをゴッタ煮にしてお話ししてきましたよ。
で、改めて驚いたんですが、今年の大学一年生ってちょうど自分の年齢の半分なんですよね。
自分が大学に入ったときに生まれた赤んぼが今年大学一年生。
ウワァ。
少々衝撃的であったことを告白しておきます。
まあぼちぼち自分が若いフリするにも無理がある年齢であることは承知しているんですが、
さりとて人生経験を上から語るにはケツが青いようにも思うわけで、
なんとも三十台とは中途半端な年齢です。


で、話した内容の趣旨は、「今のうちにいろいろ無駄なことをやっておくといいですよ」でした。
それが自分の場合は読書とか旅行とか映画とか音楽だったわけですが。
別にこれらの種目に限ったことではないですけど。
いえ、まあ、別に年を食ってからでもできるとは思うんですよ。
体力が落ちるとはいっても余暇に差し支えるほどガタ減りするわけでもないでしょうし、
気力が衰えるとはいっても好きなことには興味が向きますし。
感受性に至っては、年を重ねてもあんまり変質しないんじゃないかと思いますね。
自分の中での善し悪しの判断って、そうそう変化しないですから。
そういったことよりも、実のところ、無駄なことをやるに当たっていちばんの妨げになるのは、
生きることへの慣れなんじゃないかと思います。
経験していない事への類推は上手になりますし、
めんどくさいことや自分のリスクになることの回避も巧みになりますしね。
とりあえずがむしゃらにやっておいて後から反省するという無様さが、
だんだん自分の身の丈に合わなくなってくるわけです。
「まあこれはやらなくてもいいか……」という判断が上手になるんですね。
このこと自体は必要なんだと思うんですよ、三十路超えて四十ヅラ下げても
「フレッシュな私」を演出することの方がおぞましいですから。
ただ、そのことで何かを取りこぼす、何かが自分の中で濾過されなくなるという痛みは絶対にあって、
それが不可避だからこそ、まあ、セガワの半分の年齢のみなさんはこれから
せいぜい無駄なことをたっぷり経験して欲しいなあとそんなことを思いました。


この話をするに当たっていろいろ資料を作ったんですが、
以下に引用するフラグメントはセガワが二十五の時に書いた小説です。
せっかく見つけたのでここで晒しておきます。
まァ文章の出来映えは酷いもんなんですが、二十五の若造が老いることについて
くだくだしく言葉を弄している点だけは珍重すべきかも知れません。



 ぼくの骨はいつしか伸びることを止め、前腕や臀にみっしりと集まっている筋肉はわずかに硬くなったが、それはまだとても衰えを示すほどのものではない。しかし、そのこととはまるで関係なく、最近になってぼくは、なにか物事を行うときに、どのていどそのことをすればよいのかということがわかってきたのだ。できることの一切をやっておいて、それに必要な熱量を後からいくらでも稼ぐというやり方、そんな無様で滑稽でひたむきなやり方からは、ほんの少し遠ざかって、多少なりとも高く見通しのいい道を選ぶことができるようになった。
 そのことを肉体のせいにしたがる手合いは多いものだが、決してそうではない。今のぼくが、かつてのような過剰さから少しずつ離れていっているだけのことなのだ。肉体の老いがやってくるのは、おそらくは、その後のことだ。とてもあのころのような過剰さには耐えられないと考えた時には、実は、とうの昔にそのような無闇な質量からは遠ざかっているのだ。つまり年をとるとは、肉体の静かな劣化をなにかの尺度で置き換えることではなく、自分の内的な変化を、肉体の変質によってそれと感じ取ることなのだ。今のぼくにはまだ老いたという実感はないが、これを書いているこの一瞬にも、ぼくの頭の中ではいくつかの神経細胞が消失し、関節や筋肉を結びつける結合線維が硬さを増していくことは事実なのだ。そして、それと同様に、この十年でいくつもの道を見つけたのと同様に、また明日もなにかひとつ道を見つけるかもしれないということも、また、事実なのである。そして、自分がなにかをするのに必要な熱量と、肉体が提供できる熱量とが、せめぎ合っていると感じるとき、ぼくははじめて、自分は老いたと感じるのだろう。





1994年、雲南

1994年、中華人民共和国雲南省西双版納にて。セガワ20歳。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://segawashin.blog20.fc2.com/tb.php/130-d3202cae

segawashin

Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
ホームページはこちら。
www.segawashin.com
ツイッターはこちら。
http://twitter.com/#!/segawashin

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。