ツイッターの方ではすでに告知いたしましたが、今週の週刊文春に書評を書きました。
サーシャ・スタニシチ「兵士はどうやってグラモフォンを修理するか」(白水社)。
自分とほぼ同年代のバルカン出身の作家ときてはまったく自分好みで、実に興味深い小説でしたよ。
お話を持ってきて下さった編集さんに感謝です。
ってか編集さんのアンテナの高さにはちょっとびっくりしました。
小説の内容は拙稿をお読みいただくとして、ここでは、書評には使えなかったことをつらつらと。
-------- ☆ --------
旧ユーゴは2回旅行しています。
1回目はデイトン合意後、ユーゴ情勢が小康状態を保っていたころのことで、
スロベニアからクロアチア経由でセルビアに至りました。
まだ国際列車が走っておらず、ところどころバスに乗り換えながらの旅でした。
ベオグラードには破壊された建物が点在し、人も待ちもちょっとくたびれた雰囲気でしたが、
それでも結構な数の人が街路に繰り出していて、夕刻になればいっそう数を増したことを憶えています。
この翌年には、NATOによるベオグラードの空爆が行われました。
2回目は5年ほど前、バルカンを旅するかたわら、セルビア在住の合気道仲間を訪ねたりしました。
意外や旧ユーゴには合気道の愛好家が多いのです。
だいぶ街は華やぎを取り戻していました。
いろいろな生活のご苦労があることは、合気道仲間からも聞きましたが。
本作中にはコンピューター・ゲームがときおり顔を出しますが、
旧ユーゴで普及していたのがコモドール64というのはちょっと興奮しました。
日本ではあまり流行らなかったけれど、欧米ではホビーユースのパソコンとして結構普及していたようですね。
日本のMSXみたいな位置づけでしょうか。
R-Typeを移植してしまったツワモノもいたらしい。
テトリスとかバルダーダッシュとか(作中では『ボルダーダッシュ』となってましたが)、
登場するタイトルが懐かしくてしんみりします。
旧ユーゴの同世代と、まさかこんなところで共通の話題があったとは。
以上、三十路未満オコトワリの話題でした。
どうしても思い出さずにいられなかったのは、エミール・クストリッツァ監督の諸作品ですね。
アンダーグラウンドももちろんですし、ユーゴ崩壊の経緯を追った「ライフ・イズ・ミラクル」も。
特に後者、ユーゴ最後の代表チームが出たサッカーの試合は非常に本作のイメージに近く、
黒いユーモアに満ちた戦場でのサッカー試合で想起せずにはいられなかった情景でした。
素晴らしい映画なので、強くお勧めします。
-------- ☆ --------
ともあれ、こういう非エンタメの海外小説の翻訳は本当に大変だろうなと思うのですよ。
映画化でもされない限り(されても?)よく売れるとは思いがたいジャンルですし。
でも、僕は大好きなのです。
翻訳と出版のご苦労、どちらにも頭が下がります。
こういう人たちのおかげで、僕は「死者の軍隊の将軍」や「族長の秋」や「愛する大地」や
「供述によるとペレイラは……」や「蟹の横歩き」や「紅いコーリャン」を読むことができました。
原書で読めれば最高なのでしょうが、
これらの作品を読むためにはアルバニア語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、中国語を
小説を読めるレベルで習得しなければならず、ちょっとそれは簡単ではない苦労です。
なので、本作のような小説が売れて、次に道を開くわずかな手助けが出来れば嬉しいですね。
アーいつか「大いなる冬」の邦訳が出ないかなー(独り言)。
できればアルバニア語からの直訳で(独り言)。
サーシャ・スタニシチ「兵士はどうやってグラモフォンを修理するか」(白水社)。
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自分とほぼ同年代のバルカン出身の作家ときてはまったく自分好みで、実に興味深い小説でしたよ。
お話を持ってきて下さった編集さんに感謝です。
ってか編集さんのアンテナの高さにはちょっとびっくりしました。
小説の内容は拙稿をお読みいただくとして、ここでは、書評には使えなかったことをつらつらと。
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旧ユーゴは2回旅行しています。
1回目はデイトン合意後、ユーゴ情勢が小康状態を保っていたころのことで、
スロベニアからクロアチア経由でセルビアに至りました。
まだ国際列車が走っておらず、ところどころバスに乗り換えながらの旅でした。
ベオグラードには破壊された建物が点在し、人も待ちもちょっとくたびれた雰囲気でしたが、
それでも結構な数の人が街路に繰り出していて、夕刻になればいっそう数を増したことを憶えています。
この翌年には、NATOによるベオグラードの空爆が行われました。
2回目は5年ほど前、バルカンを旅するかたわら、セルビア在住の合気道仲間を訪ねたりしました。
意外や旧ユーゴには合気道の愛好家が多いのです。
だいぶ街は華やぎを取り戻していました。
いろいろな生活のご苦労があることは、合気道仲間からも聞きましたが。
本作中にはコンピューター・ゲームがときおり顔を出しますが、
旧ユーゴで普及していたのがコモドール64というのはちょっと興奮しました。
日本ではあまり流行らなかったけれど、欧米ではホビーユースのパソコンとして結構普及していたようですね。
日本のMSXみたいな位置づけでしょうか。
R-Typeを移植してしまったツワモノもいたらしい。
テトリスとかバルダーダッシュとか(作中では『ボルダーダッシュ』となってましたが)、
登場するタイトルが懐かしくてしんみりします。
旧ユーゴの同世代と、まさかこんなところで共通の話題があったとは。
以上、三十路未満オコトワリの話題でした。
どうしても思い出さずにいられなかったのは、エミール・クストリッツァ監督の諸作品ですね。
アンダーグラウンドももちろんですし、ユーゴ崩壊の経緯を追った「ライフ・イズ・ミラクル」も。
特に後者、ユーゴ最後の代表チームが出たサッカーの試合は非常に本作のイメージに近く、
黒いユーモアに満ちた戦場でのサッカー試合で想起せずにはいられなかった情景でした。
素晴らしい映画なので、強くお勧めします。
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ともあれ、こういう非エンタメの海外小説の翻訳は本当に大変だろうなと思うのですよ。
映画化でもされない限り(されても?)よく売れるとは思いがたいジャンルですし。
でも、僕は大好きなのです。
翻訳と出版のご苦労、どちらにも頭が下がります。
こういう人たちのおかげで、僕は「死者の軍隊の将軍」や「族長の秋」や「愛する大地」や
「供述によるとペレイラは……」や「蟹の横歩き」や「紅いコーリャン」を読むことができました。
原書で読めれば最高なのでしょうが、
これらの作品を読むためにはアルバニア語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、中国語を
小説を読めるレベルで習得しなければならず、ちょっとそれは簡単ではない苦労です。
なので、本作のような小説が売れて、次に道を開くわずかな手助けが出来れば嬉しいですね。
アーいつか「大いなる冬」の邦訳が出ないかなー(独り言)。
できればアルバニア語からの直訳で(独り言)。
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