セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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というわけで4/13(日)。

「ゆびでひくもの、ゆみでひくもの」というコンサートに行って来ました。
知人の作曲家、侘美秀俊さんが企画なさったのですが、
ヴァイオリンとギターのデュオというなかなかに粋な組み合わせです。
後述しますけど、とりわけクラシックではこの編成の曲は少ないんですよ。
音色としては非常に相性よく聞こえますし、
編曲というかたちでは最近ずいぶん演奏や録音もされているみたいですが。
ギターは日渡奈那さん、ヴァイオリンは中根みどりさん。
お二人とも、実演を聞くのは初めてでした。


会場は下高井戸の、中国茶芸館Blue-Tというお店でした。
この場所がまたステキだったのですが、少々古びた(婉曲表現)雑居ビルの三階、
ふだんは中国茶を中心にしたカフェであります。
店内はお茶の香りが満ちてひっそりと静まり返っているのですが、
眼下には下高井戸の商店街、耳をすませば遠くの車の音や人のざわめきがかすかに聞こえてくる、
ちょっとばかり休日午後の世界から乖離したような雰囲気の場です。
ちなみにコンサートはお食事付き。
ビュッフェ形式でいろいろ選べた料理のなかでも、
とりわけカレーがすばらしくスパイシーでおいしかったことを書いておきます。


パガニーニのソナタ第1番からコンサートが始まりました。
今日の隆盛ぶりからは信じがたいことですが、ギターという楽器は、
どうも十九世紀の中葉までイベリア半島の民族楽器という位置づけを出なかったようですね。
従って近世のドイツあたりの作曲家は軒並みギターの曲を書いていないのですが、
ニコロ・パガニーニという超絶技巧ヴァイオリニストにしてイタリア出身の色男は、
愛人がギター弾きであったというまことに分かりやすい理由から
ギターの曲を何曲も作っております。
このポルノ野郎のおかげで近代ギター音楽の間口が広がったと考えると
色がらみの欲望もあながちバカにできませんね。
まあこういうの、芸術のジャンルでは(時に政治や科学のジャンルでも)ままあることですけど。
パガニーニの曲は何曲か演奏されたのですが、非常に意外だったのは、
実演で聞くと実に映える曲揃いだと言うことです。
率直に言って、パガニーニの曲というのはやたらにヴァイオリンが忙しそうなばかりで
どうも続けて聞くのはしんどい音楽だという偏見を持っていたのですが、
たった今そこにあるヴァイオリンからすいすいと流れ出てくれば
胸の空くように気持ちのいい音楽なのだと感じ入りました。
リストとかショパンの曲にも、似たような雰囲気があるような気がします。


侘美さんの曲も演奏されましたよ。
「ある日の3つのスケッチ」というヴァイオリンとギターの曲から、二曲。
一曲目は、朗々と歌いつつもどこか遠くから聞こえてくるようなヴァイオリンが、
二曲目は訥々と刻まれるヴァイオリンのピチカートが
非常に印象的でした。
眠りに落ちるときにそっとかかっていたら幸福であろうな、そんな曲でした。


なお、数曲はギターソロの曲でした。
日渡さんのギターは非常にキレが良くて、音の粒が明瞭でとても気持ちがいいのです。
カステルヌオーヴォ=テデスコのソナタ、武満徹「ギターのための12の歌」から早春賦、
特に後者は自分の大好きな曲です(この12曲はいずれも珠玉の商品だと思います)。
二曲演奏されたジブリのアニメの音楽が本当に素敵だったも付け加えておきます。
一つは魔女の宅急便から「海の見える町」、
一つはとなりのトトロから「さんぽ」。
特に一曲目、ギターで弾かれるとこれぐらい印象深い曲だとは思いませんでした。
また、会場にいた小さな女の子二人が少々退屈していたようなのですが、
二曲目が始まるなりさっと目を輝かせ、小さな声で一緒に歌っていました。
和みます。
箸休めと言えばあまりにも失礼でしょうが、
コンサートの合間に差し込まれた小粋なデザートであったと思います。


↓CDがありましたのでご紹介。
ジブリ・ザ・ギタージブリ・ザ・ギター
(2007/07/18)
日渡奈那

商品詳細を見る



コンサート終了後に侘美さんや日渡さん、企画をなさった梅原さんなどとおしゃべりしました。
それぞれの分野のプロフェッショナルの人と、こういう形で話ができるのは楽しいですね。
それに、冒頭にも書いたとおり、これは会場の選定を含め、とても素敵で小粋なコンサートでした。
不勉強かも知れませんが、あまり自分の知らない形態のコンサートでもあり、
多く行われていないと言うことは、実際に行うにはそれなりのご苦労もあったことと推察します。
携わった方々に深く感謝したいです。


図らずも二日続けてコンサートとなったのですが、
つくづく音楽というのは幅広く豊かなものだと改めて感じ入ります。
特に、両日ともヴァイオリンが全面に出てくるコンサートでしたが、
そこから紡ぎ出される音楽は大きく違い、そしていずれも非常に面白いものでした。
音楽というのは人間の生存にはこれっぽっちも必要ではないのですが、
実は人間、うたうことをやめたら死ぬ生き物ではないのかとすら思います。
そうでなければ、世界のあらゆる時代のあらゆる土地で、
人間たちが歌を歌い楽器を奏で、技を鍛え、新しい音楽を作りだし続けてきた理由が説明できません。
きのうの記事にも似たようなことを書きましたが、
「面白いもの」というのは、世界にまだまだいくらでも存在するのでしょう。


人生に飽きるには、まだ少々はやいようです。
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コメント

日渡さん・・・

帰国してたんですね。もうずいぶん会ってないや。

ちなみにパガニーニは自身もギターを弾いたらしいですよ。

あれ、徳永先生のお知り合いでしたか。
とてもキレのいい音の、素敵なギターを弾くお姉さんでしたよ。

ヴァイオリン、ビオラのみ成らず、ギターもですか。
天才は凄いものですね。

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Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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