セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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 竹熊健太郎さんのブログに面白い記事がありました。
 携帯コミック、要するに携帯に配信されて読む漫画についてなんですが、これが従来漫画をあまり読まなかった層の需要を掘り起こしているんではないかというもの。これ自体とても興味深い問題提起だし、個人的な心情としてはかなり頷けるところがあります。
 自分や友人たちは大概ビブリオマニアなので、部屋にごっそり本が積んであるという状況に慣れきっているわけですが、実は本って読まない人はほとんど読まないんですよね。読むのかもしれないけど、手元に置いておかない。そういう人たちでも、携帯という端末にコンテンツが配信されてくれば事情は違うのではないかと思うわけです。いちいち本を持ち歩く必要もないですし、飽きたらデータを消去すれば済むわけですし。
 で、このことでちょっと考えたのは、同じことが小説で出来るかな、ということ。
 もちろん、携帯小説というものはすでに存在し、かなりの人気を誇っています。自分はほとんど読んだことがないのでこれについて云々することはできないんですが、最初から携帯で読まれることを意識した小説でなければ、正直なところ、携帯の画面で長い文章を読むのはちょっと骨が折れるんじゃないかと想像します。まあ画面のサイズや解像度、携帯への慣れにも依存するんでしょうが、例えばすでに書かれた長編小説をそのまんま携帯に配信しても、喜んで読まれるかというとちょっと微妙な気がします。そもそもがA4や文庫本サイズの版組を意識して書かれた文章でしょうし。
 ただ、携帯で小説を読むとするならば、短篇小説はあんがい相性のいいジャンルではないかと思ったのです。


 これは以前から思っていたことなんですが、短篇小説というのは現在の日本であまり優遇されていないジャンルのように思うんですね。要するに、発表の場が非常に少ない。
 自分はもともと短篇小説が好きで、デビュー前から結構な数の小説を書いていたのですが、その9割方が短篇小説です。しかしこれは、本当に持って行きようのない原稿なんですよ。小説を書き始めてから実際に新人賞に投稿するまでに異常に時間がかかっていたのには、実はこういう事情も反映しています。まあ確かに、アマチュア作家の力量を図るのに10数枚の短篇だけではどうにもならないでしょうし、仮にどこかに載せたところでよっぽどの数が溜まらなければ書籍化は難しいでしょうし。ニューヨーカーとかコスモポリタンみたいに、短篇小説を載っける雑誌が少ないことも事情としては大きいでしょう。
 しかし、そのへんの事情を勘案するとしても、短篇小説があまり読まれないのはもったいないなあと思います。サキとかバーベリとかボルヘスの短篇は本当に面白いですし、日本でも横光利一や三木卓みたいに実に優れた短篇を書いた人がいますし。ただ、俺も同じようなことをやってみたいなあと思った作家がいたとして、今の日本でその発表の場が極端に限られるのはどうにも残念です。
 そこで、携帯ってのがうまいこと使える道具にならないかなあ、と思うわけです。


 最低でも1行20文字ぐらいのサイズで表示してくれれば、小説を読むフォーマットとしては充分だと思います。新聞の連載小説がおおむね20文字×40行ぐらいで組んでありますので、極端に読みづらいことはないでしょう。画面2つ分で新聞の連載小説1回分、原稿用紙にして2枚分です。これだったら、原稿用紙15枚ぐらいまでのサイズの小説ならば1回でダウンロードしても極端に長いスクロールを強いることもないでしょう。
 こんなかたちで、短篇を読みたい作家の原稿を募って定期的に配信する、と。短篇ならば、その時々の気分で読みたいモノを選べますし、続きを気にする必要もないですから、きわめて携帯向きだと思います。時間つぶしや、寝る前の一読であって一向に構わないんですよ。ちょっとした空き時間に一つ、なにか面白いものがたりが読めるってなかなか素敵じゃないですかね。本がちっとも売れないとはよく聞くことですが、ブログに掲示板にSNSなど、ネットを介して充分に文章は読まれているわけですから、「読む」ことへの需要はまだまだ尽きないと思います。少々都合のいい希望を述べるならば、冒頭の携帯コミックの話じゃないですが、こういうかたちで「へえ、短篇小説って面白いじゃん」と思ってくれる人が増えたらしめたものです(笑)。


 そんなわけで、携帯で短篇小説、ご興味をお持ちの出版社や携帯コンテンツ作製会社の方はいらっしゃいませんか(笑)。もし実現するようなことがあるならば、その節には全面的に協力させていただく所存です。



(追記)この本だけは宣伝させてくださいな。
今世紀初頭のウクライナはオデッサで活躍したユダヤ系の天才作家、イサーク・バーベリの短篇集です。
簡潔で引き締まった文体、どす黒いユーモア、どこかノスタルジックな物語、どれを取っても一級品です。
個人的にはルルフォ、ボルヘスと並ぶ短篇小説の神様。


オデッサ物語 (群像社ライブラリー)オデッサ物語 (群像社ライブラリー)
(1995/10)
イサーク バーベリ

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2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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