セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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 えらく間が空いてしまいましたが、リバーダンスの感想です。
 ……毎日記事を書いてらっしゃるブロガーの人は偉いですね。余裕で放置プレイにしてしまう私には頭が下がります。


 まあそれはそれとして。
 リバーダンス、これは実に素敵な公演でしたよ。多分にショウアップされてはいますが、この舞台のベースになっているのはアイルランドの音楽や舞踊であり、そこに、アイルランド人の歴史を重ね合わせているようでもあります。
 特に前半は、アイルランドを模しているらしい舞台でのダンスと音楽が中心でした。あまり上体を揺らさず、回転が動きの中心となっている踊り方です。円舞(リール)というやつなんでしょうか。これがどの程度トラディショナルな作法に則っているかは判断ができないのですが、男女の一群が輪を作り、その輪がほどけて列を組み、また大きな輪を作り、対と集団とが巧みに入れ替わるダンスは見ていて文句なく気持ちのいいものでした。
 それにしても、20世紀の初頭までは風紀を乱すという理由からあまりおおっぴらに踊ることも出来なかったらしい(これはカソリック教会の圧力があったようです)アイリッシュ・ダンスが、こういったかたちで現代風の装いの元に世界の各地で上演されるというのは非常に面白いことだと思います。もっとも、舞踊や芸能が近代まである種の蔑視のもとに見られていたのは、アイルランドに限ったことではないようですが。


 また、この公演では、アイリッシュ・ダンスとその他の舞踊とを積極的に混交させようという試みがなされていたようで、じっさいにタップやフラメンコ、ロシア・バレエといったさまざまな舞踊が交互に、時には同時に踊られることになりました。時にはあざといかなと思わせる瞬間がないこともなかったのですが、結果としてこれは、実に刺激的な舞台を作っていたように思います。
 そもそも舞踊は、必ずそれぞれの流儀や作法を持っているものだと思います。いわば基盤とする「動きの基本」みたいなものです。とはいえそれは舞踊に内在していて、素人目にはやすやすと看破できるようなものではなくなっているのでしょうが、複数の舞踊を並列してみたときに、それぞれの舞踊が持つ「作法」が鮮やかに見えてきたように感じられました。これは、本当に興味深い経験でした。
 とりわけ感動的だったのは後半、アイリッシュ・ダンスとタップダンスとを共演させた一幕です。「かかとを床に打ちならす」というよく似通った表現形が、非常に異なった動きから生み出される点に驚きました。とりわけ異なって見えたのが上体の扱いで、アイリッシュ・ダンスが体軸をほとんどブレさせないのに対し、タップはかなり自由に上体を扱っているのです(とはいえかなり意図的に崩した印象を受けましたが)。この2つの作法が舞台の上で並立し、お互いの運動を少しずつ取捨しながら混じり合ってゆくさまは、まぎれもなく本公演のハイライトの1つであったと思います。
 この「動きの作法」の違いはフラメンコとの対比でも鮮やかでした。上肢の動きがきわめて禁欲的なアイリッシュ・ダンスになじんだ目で見れば、腕、手、指とはこれほど自在になめらかに動き、舞踊を彩るものかと思ったほどです。
 しかし、それにも増して差異を感じたのは、ロシアのダンスでした。おそらく彼らの動きはバレエで鍛えられたものなのでしょうが、このことで生み出される身体運動はちょっと他のダンスとは質が違っていました。いい悪い、うまい下手の問題ではなく、舞踊を構成する身体運動が、ほかの舞踊とどこか異質であるように思えたのです。舞踊についてはまるで素人な人間の感想にすぎないのですが、「跳躍」「回転」といった基本的な所作の一つ一つに、非常に強い均整が感じられるのです。これはおそらく身体運動を習得する方法論の違いなのではないかと想像します。バレエという舞踊の持つ強固な方法論の現れなのかも知れないのですが。


 個人的には、思いがけず、舞踊というものの多様さと広がりを実感するステージでありました。もちろんそういう小難しいリクツ抜きでも、存分に楽しめると思いますよ。
 ご興味おありの方は、ぜひどうぞ。
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2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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