セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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昨日の毎日新聞に「チューバはうたう」の書評が掲載されました。
残念ながらwebでは読めないようですが、本当ですよ。
↓一応こんなものがあったので貼っておきます。
http://www.honya-town.co.jp/hst/HTNewspaperReview?isin=3&hiduke_rink=20080601

Webに掲載されておりました。こちらです。(2008.7.9.追記)




評者は作家の池澤夏樹さんです。
これは、本当に嬉しかったです。
大学のころに「スティル・ライフ」を読んで以来、大好きな作家さんですので。
特に好きなのは「真昼のプリニウス」という長編で、
小説から「単にストーリーを説明するだけではないなにものか」を感じ取ったのは
この作品が初めてだったかも知れません。
「南鳥島特別航路」等のエッセイもすばらしく面白いとか、
「南の島のティオ」という素敵な児童文学があるとか、
個人的な思い入れを書き始めるときりがないのですが、一つだけ。
拙作「チューバはうたう mit Tuba」の中にこういう下りがあります。


 これははっきり言おう、音楽をやっている人間たちの大半、おそらくは九十九パーセントかそれ以上は、実のところ、本当の意味で音楽をやっているわけではないのだ。自分たちのやっていると信じる音楽を包括してくれるジャンルの中に居場所を求め、そのジャンル全体の認知を裏切らないことを最上の価値とするのだ。そこには様式美はあるが、面白味はない。すでに築かれた塔に上って風景を楽しむことはできるが、その塔に新たな階層を付け加える勇気はない。要するに、皆、いくつもの小島の周りを泳いで珊瑚礁の海を楽しんではいるのだ。しかし、どんな波がくるかわからない外海へと向けて泳ぐ意志と力はない。
(筑摩書房『チューバはうたう mit Tuba』 55ページ)


この最後の部分は、池澤さんのインタビュー「沖に向かって泳ぐ」からお借りした表現です。
元々はウィリアム・フォークナーがアーネスト・ヘミングウェイを評して
「沖に向かって泳ぐ勇気」という表現をしたと、この本から教えられました。


それからもう一つ、池澤さんはテオ・アンゲロプロス監督の映画の字幕を付けるという
特筆すべき仕事をなさっています。
「ユリシーズの瞳」は、今なお自分の中で三指に入る映画かも知れません。
日本公開当時は二十歳ちょい過ぎの若造に過ぎませんでしたが、
それでもこれは、キャラクターを動かしストーリーを語る、だけではない、なにごとかを感じ取った
初めての映画だったように思います。
そうとなれば「旅芸人の記録」を観ないわけにはゆかないのですが、
……4時間か………………。
むぅ。


↓せっかくですので二冊ほどお勧めを。後者は京都大学での文学の講義です。面白いですよ。

真昼のプリニウス (中公文庫)真昼のプリニウス (中公文庫)
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コメント

書評から

 この書評からこの本のことを知りました。池澤氏は私も大好きな作家です。「チューバはうたう」はとてもよかったです。端整で輪郭のはっきりとした文体で、多彩にして適確な表現に見事な文芸を感じました。チューバであれ何であれ、人が好むものには何の説明もできません。だからどうでもいいではないかとただ切り捨ててしまったらこの話は生まれませんね。世の中の99%以上の人は自分でチューバを演奏することはないでしょう。そういう楽器をあえてネタにしていながら、読み進むうちに「インディペンダントなチューバ吹き」である彼女の心に、自分の心のある部分が確実に重なるのを感じました。
 ベストセラーになるような作品ではないのでしょうが、こういう見事な佳作に出会える時に読書の本当の嬉しさがあります。
 3つの作品のうちではもう一つ「百万の星の孤独」も大好きなストーリでした。
 素晴らしい作品に感謝いたします。

>ONO様
ご高評ありがとうございます。
池澤さんは私も大好きな作家で、ご評価いただいて本当に嬉しかったですよ。
不器用な書き手ですが、今後とも温かく見守ってくださいませ。
近々、新作をご披露できるかと思います。
宜しくお願いいたします。

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Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
ホームページはこちら。
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