セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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 こないだの日曜日、三鷹市のジブリ美術館に行ってきましたよ。
 井の頭公園の隅っこというなかなかいいロケーションにあって、お散歩するには最適であります。三鷹からも吉祥寺からも、ダラダラ歩いて15分ぐらい。で、本当にジブリの映画にそのまんま出てきそうな(イメージで言うと魔女宅のキキの実家みたいな雰囲気の)不思議な建物が見えてくるんですね。


 入場のときに、中のシアター「土星座」の鑑賞券が貰えます。これが嬉しいことに、ジブリ作品のフィルムをカットしたもの。ちょうど三コマ分。
 前回来たときは、(多分ハウルかなにかの)荒野のシーンだったのでかなりがっかりしたのだが、今回は耳すまの月島雫(&おっさん)でしたよyahoooooooo。またいらんところでスパークしそうになる。
 ここで上映するフィルムは、ジブリ美術館でしか観られないらしく、かなり出来もよかったのですが、感想は後述。
 同じフロアに、アニメーションの歴史をいろんな方法で体感できるかなり出来のいい展示があって、これもじっくり見ていると結構はまりこみます。面白いですよ。


 さて、ここから二階に上がると、アニメーションの制作の現場を際限という体裁を取りつつ、その実は宮崎駿のイマジネーションの源を具現化したようなちょっと不思議な展示室があります。
 まあ一応、ストーリーを練ってコンテを切って下絵を描いて動画を描いて、なんていう博物館的な体裁は取っているんだけど、展示の主眼はそんなアニメーション制作の過程をおさらいするところにはないようで。
 なにしろ、おいているモノの数がものすごい。雑多に積まれた資料、美術集から歴史の本から建築図鑑から飛行機の模型から懐中時計までが並べてあって、壁や机の上にはジブリのスタッフが書いた絵が大量に貼り付けてあるんですよ。それもきちんと完成された絵ばかりではなくて、明らかに構想段階のラフな絵まで。
 あーこれはナウシカだけどちょっと服の感じが違うなあとか、ロングヘアのキキだから原作に近い感じでキャラデザしてたときのかなあとか、いろいろ見ている間にぐぐっとこみ上げてくるものがあって、恥を忍んで言えばほとんど泣きそうになってしまったので、同行の人にばれないように苦労しましたよ。
 なにか感動的な場面があったからではないんです。ただ、通りを疾走するキキとか、パズーがフラップターに乗ってるところとか、そんな他愛もない場面のラフを見て、どうしようもなく感動するものがあったんですね。


 ああ、俺、ジブリのアニメが好きなんだなあとしみじみ思いました。どの作品がどうだとか言うのではなくて、ほとんど原体験に近い。
 そもそも自分の思春期が、ジブリ黄金期に重なってるんですね。
 小五の時に公開されたのがナウシカ、中一のときにラピュタ、中三のときにトトロ、高一のときに魔女宅ですよ。ナウシカ以外はほとんどリアルタイムで観ているんだけど、人生でいちばん多感な時期にこんなやたらに完成度の高いアニメが怒濤のごとく押し寄せてくるわけです。これに中二のときの「オネアミスの翼」と、単行本の「シュナの旅」を加えれば、自分が強烈な影響を受けたアニメはほとんど出揃いますね。
 なんて贅沢な時代だったんだろうと思います。


 その影響の理由はなんだったんだろうと考えてみたんですが、それは、ストーリーが面白いとかキャラが魅力的だとかそういうことだけではなくて、なんというか、やたらに存在感の強い、押しても引いてもびくともしない作品世界の存在感みたいなものを感じ取ったからなんだろうなと思います。
 大体にして、ラピュタは何度観たか分からないぐらい好きな作品なんだけど、中学校のころからいちばん好きなシーンは、冒頭のパズーの住んでいた鉱山町でした。ちょっと中学生の感性としてはアレですが。
 ちっちゃな町があって、渓谷があって、山の中に縦横にトロッコが走って、底知れない炭坑の穴があって、どうやったらこんなに濃密な空間を作り出すことができるんだろう、と、しみじみ感動したことを覚えています。パズーの住んでいた掘っ建て小屋すら、魅力的に写りましたから。
 魔女宅のコリコの町にも同じことが言えて、ひょっとするとキキが家を出てからオソノさんちに落ち着いて、ジジを身代わりに配達するあたりまでは、今でもジブリの作品の中でいちばん好きなシークエンスかも知れません。
 この、どの家のドアを開けても人が住んでいそうな存在感というのは、本当にすごいことだと思います。これはさっきも書いたけど、オネアミスにも同じことを感じていて(これもこれだけで文章書けちゃうぐらい好きな作品なんだけど)、そうやって回顧してみると、自分は当時から物語の最終的な落としどころ、つまりはラピュタだったらラピュタが崩壊するとか魔女宅だったらキキが飛行船からトンボを救うとかオネアミスだったら無事人工衛星の打ち上げに成功するとか、そこにはさほどの関心を払っていなかったですね。物語を内包する世界の丸ごとに興味があって、それをゼロから作り上げることのできるアニメってのは本当にすごいモノなんだなあ、と思っていたんだと思います。
 結果として、中学校のころの自分は、そういう世界を創造するためにはどうしたらいいか、そんなことにばっかり頭を悩ませていたようです。たぶん、キャラクターよりも舞台設定を、ストーリーよりも細部を重視する自分のやり方は、このころに端を発しています。そういう意味で、自分が物語をひねくり出すことを始めたとき、ジブリのアニメ(とオネアミス)から得た影響はとてつもなく大きいんでしょうね。
 そういえば、恥をかきついでに、当時考えていたストーリーをご紹介。
 ルナンという名前の冒険者が、年を取って六〇歳ぐらいになって孫も産まれて、最後の冒険に出ることを思い立つ。生命が生まれ出るところだと伝えられる大河の源流をたどる旅に出るのだ。結果としてルナンは大河の源流にたどり着くのだが、そこにそびえている「生命の樹」を目撃して、発狂する。そして数ヶ月の後、小舟に乗って、「まるで赤子のように無邪気な、なにも記憶していない姿の」狂者となったルナンが故郷に流れ着く。
 ……なんだかなー。中学生が考えるにしては枯れすぎた話ですが。


 この部屋以外にも、ロシア民話の「三匹の熊」の特別展示があったり、実物大ネコバスのぬいぐるみに群がったお子さまがほとんど半狂乱になってはしゃいでいたり、建物のあちこちに奇妙なギミックがたくさん仕掛けられていたりと、いろいろ見どころがあるんだけれど、そのへんは割愛。
 ただ、屋上にひっそりと経っているロボット兵と空中庭園は見ものです。
 本当にかっこいい。そして、ちょっと寂しげで。


 思いがけず長文になってしまってびっくりしているんだけど、それだけ、自分の中でジブリの作品はでかい位置を占めているんだなあと再認識しました。書こうと思えば、この三倍ぐらいの分量になっちゃうでしょうし。
 ただ、それだけに、先に述べた「土星座」で上映されたフィルムにちょっとした違和感を感じたことは書いておきます。
 「星をかった日」という短篇で、これもやたらに出来がいい作品です。。ちょっと宮沢賢治を思わせるようなファンタジックな話で、まあそれはいいんですが、非常に些細なところに違和感を感じたんですね。CGの使い方が相変わらず微妙だなあ、ということとは別に。
 キャラクターの些細な動きが、どうも気になってしかたない。それも、ほとんど動いていないようなところ。少年とお姉さんがメシ食いながら会話しているとか、少年が歩いているとか、どうでもいいような場面が。そういうシーンのささやかな動きが、ほんのちょっとだけ過剰だと感じたんですよ。平たく言えば、なんとなく立ち姿が不自然だとか、そういう印象に近いか。
 これは奇妙な印象でした、べつだん作画や動きにはなんの問題もないのに。ただ、人間がほとんど無意識のうちに取っているような行動、それをすくい上げるのが、かつてのジブリはものすごく巧かったのだと思います。椅子に座ってぼさっとしているときのような、そういうどうでもいいような場面が。
 それを結果としてアニメのキャラクターの動きにまで持って来られたのは、一つには宮崎駿の鋭敏な感性があったからだと思うし、もう一つには、熟練のアニメーターの阿吽の呼吸みたいなものがあったのだと思います。
 この作品は、宮崎駿の監督作ではあるが、スタッフの多くはジブリの若手だったようです。それだからだ、とは、思いたくないのだけれど。かつてジブリの傑作を支えた練達の、有名無名のアニメーターたちの技が、どこかで世代交代に失敗しているのだとは思いたくないけれど。
 しかし、明らかにあり得ない動きであるのに、まるで違和感なく観ることのできたかつてのジブリ作品に出てきたキャラクターと、どこにもおかしいところはないのに、かすかな違和感を残す本作品のキャラクターとの間には、案外深い断絶があるような気もします。
 しょせん素人の取り越し苦労であればいいんですが。


 画像はロボット兵。それから中庭の噴水です。

robot.jpg


SANY0217.jpg
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2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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