セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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どうせ効きもしないクーラーを止めてしまい
窓をいっぱいに開けると
熱い風がとたんに吹き込んでくる
時に仔虫や土埃をまじえ
車の中が夏に満ちる
地の果てまで続く田んぼに
まっすぐの道がのびる
イバラキ県はツクバ郡の片隅を車は走り
カーステレオからは
ヒバリたちの囀りが響きわたる
かわいらしさともあどけなさとも縁のない
どことなくふてぶてしく臆面なく
この地上でいちばんの力に満ちたヒバリたちの歌だ
道は続き車はうなりをあげ
ヒバリたちは歌い続ける
そうだヒバリたちよ歌ってくれ
ドナウのほとりの沃野から舞い上がり
かるがると成層圏をこえユーラシアを渡り
極東の島ぐにに舞い降りてくれ
クラリネットよ舞え
トランペットよ叫べ
サキソフォンよ身を震わせろ
テューバよ大地を揺るがせよ
ここはイバラキ県ツクバ郡の
田んぼのさなかを果てしなくつづく一本道だ
ただ暑いばかりの夏風をものともせず
おまえたちの歌はかるがると大気の中を舞うだろう
俺はもう少しアクセルをふかそう
十年落ちのオンボロ車に鞭をあてよう
だからヒバリたちよ
歌ってくれ
はてしなく暑くどこまでも長い
夏のさなかの一本道を
それでも車を走らせる俺のかたわらに
きらきらとまぶされる光りのような
かけがえのないいろどりとなってくれ



-------- ☆ --------


研修医のころ、イバラキ県の片田舎の病院に勤務していました。
まあ休日になるとやることがないので車でフラフラ徘徊したりしたんですが、
その当時にFanfare Ciocarliaというバンドを知りました。
ルーマニアの、ジプシー・ブラスのバンドです。
そのへんの経緯はこちらのエントリーをご覧いただくとして、
まあおそらく北海道を覗けばいちばん日本でだだっ広い風景が楽しめるイバラキ県の水郷地帯を、
Fanfare CiocarliaをBGMにオンボロ車ですっ飛ばしていたあの夏は
自分の人生の中でも最上の記憶の一つだったと今になっても思います。
そのFanfare Ciocarliaがこのたび来日するということなので、その記念に当時の詩を再掲。
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Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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