セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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ファンファーレ・チォカリーア Fanfare Ciocarliaが来日しますよー!
イヤサカーーーーーーーーーーー!


 ファンファーレ・チォカリーアのことを知ったのは、今からかれこれ10年ぐらい前のことです。
 クストリッツァ監督の「黒猫・白猫」に感化されたか、渋谷HMVの棚でジャケ買いしたか、なにかラジオを聴いたか、今となってはきっかけをよく覚えていないんですが。まあともかく当時出たばかりのアルバム"Baro Biao"には度肝を抜かれました。ボロ車から顔を出してトランペットを吹いている、超濃い口な面構えのオッサンたち。もうジャケットからすでにガツンとやられるオーラが出ています。そしてCDを再生すると始まる重低音の(!)ファンファーレ、「ツィガーニィーーーーーー!」のシャウト。
 もう、すべてが驚きでした。まるで聞いたことのない種類の音楽なのに、なんなんだろうこの説得力は。「勢いさえあれば洗練なんか要らない(*)」と言わんばかりの疾走感。打楽器だけではなく、メロディからもベースラインからも立ち上がるリズム。なんの説明もされない、いかなる宣伝文句もくっつけられない音楽が、ここまで面白いと思うことはまれでした。当時住んでいた茨城県の南部というのがまたイイ感じの田舎町で、ちょっと郊外に出れば利根川沿いに天の果てまで伸びるかと思われる(たぶん北海道以外で地平線が見える国内唯一の地点ではないでしょうか)道路を走りながらファンファーレ・チォカリーアを聞くのは、当時けっこう忙しい研修医生活を送っていた自分の、まぎれもない至福のひとときでありました。
 なお、当時のことを書いた詩をこちらにあげておきましたよ。

(*)もちろん彼らの音楽を野卑でピュアなものと言うつもりは毛頭なく(これは日本人が非先進国の文化を受容するときに使いたがる形容なので注意が必要ですね)、むしろアルバム毎にその音楽をぐんぐん変容させていることに驚きます。


 その後ファンファーレ・チォカリーアは「炎のジプシーブラス」という映画に出演し、「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」の音楽を担当し(しかしこのチョイスは最高)、日本での知名度もずいぶん上がってきたのではないかと思います。最近では「ジプシー・キャラバン」という映画にも出ていましたね。これは素晴らしいドキュメンタリーでしたよ。
 これらの映画の中で印象的だったのは「炎のジプシーブラス」中、新しい曲を作るときのシーンです。当然のごとく、彼らは楽譜を使わないんですよね。トランペットの人がタララッタータタララッタ、てな感じになにかフレーズを吹く。するともう一人が「いやこっちがいいんじゃないの」みたいなことを言ってフレーズを変形させる。このやりとりが続くうちに、曲が出来上がってゆくわけです。
 なにが嬉しかったかって、これとそっくりな情景を新彊ウイグル自治区のカシュガルという町で見ているんですよね。あちらはウイグルの民族楽器、太鼓の練習中のようでしたが。じいちゃんが太鼓を叩く、するとかたわらの若いのが叩く。いやそうじゃねえだろとかじいちゃんが言って若衆の頭をどつく、若いのがまた叩き直して、次第にリズムが練り上げられていく。なんか、どっちも、音楽の原初みたいなものに立ち会っている気分でした。とりわけアマチュアで音楽をやっている人は、あの映画は是非みてみるといいですよ。いわゆるクラシック音楽のような、厳密なメソドロジーで出来上がっている音楽ももちろん好きなのですが、その枠の外にもまだずいぶん音楽の海は広がっているように思うからです。


 なおこのファンファーレ・チォカリーア、お気づきの方はいらっしゃるかと思いますが、拙作「チューバはうたう mit Tuba」に出てくるMuzicanti Auriiのモデルになったバンド(の一つ)であります。もちろんそのままではないのですが、ファンファーレ・チォカリーアがなければ絶対に生み出せなかったキャラクターであることは間違いありません。あんまり作品のネタばらしは好きじゃないんだけど、これはもう太宰治賞受賞時に書いちゃったことだから構わないですね。見る人が見ればすぐ分かるし(笑)。
 ただ、あの作品中では「バルカン半島」とだけ書いて彼らの住む場所を特定していないのですが、これはどこか特定の国に限らずヨーロッパのあちこちに広く住みなし、多種多様な音楽を作り上げているジプシー・ミュージシャンへの敬意のつもりでそう書いたわけです。でもまあ、まず間違いなく最大のリスペクトを捧げたいファンファーレ・チォカリーアにちなみ、バンド名をルーマニア語でつけてみました。(この作業は結構苦労して、身辺に当然ルーマニア語話者などいるはずもないので手持ちのルーマニア語の文法書をにらみつつなんとか訳したのですが。間違いなどありましたら、どうぞご指摘くださいませ。)


 初めてファンファーレ・チォカリーアの実演に接したのは前々回の来日時(2004年)、すみだトリフォニーと渋谷VUENOSの両公演です。あれも素晴らしかったなあ。とりわけ印象深かったのはすみだトリフォニーでのことで、正直なところクラシックのコンサート向けに作られたこのホールでは少々残響が多すぎ、ファンファーレ・チォカリーアでは響きすぎる印象があったんですよね。
 ところが公演が終了してロビーに出たあと、なんと団員のおっちゃんたちもぞろぞろ出てきてアンコールをやったわけです。これが、すごかった。全然音の響きかたが違うんですよ。ああやっぱりモルダヴィア平原の空の下でラッパを吹いていた人たちはすごいな、と思いましたね。考えてみれば残響ゼロの屋外ですから。しかもわざわざ演奏を聴きに来たわけじゃない、パーティーやら結婚式やらの会場で吹いていた人たちです。そこに、彼らのルーツである放浪芸の一端が垣間見られた気がして、柄にもなくひどく感動してしまいました。当然聴衆もえらい感動して盛り上がって、警備員の人が制止するのに苦労していましたが、チォカリーアのおっちゃんたちはすかさずおひねりなどを集めておりましたw。このあたりの経験も、あの小説に生きているんでしょうね。


 というわけで、今週土曜日、10/11、三鷹で久しぶりにチォカリーアのビートに酔いしれてまいります。ああどうしよう、拙作をプレゼントしてしまおうかしら。日本語で書かれた小説なんて、もらっても困るでしょうが。



 ファンファーレ・チォカリーアのCDもご紹介。未聴の方にはまずこちらをおススメ。2枚目のアルバムです。

Baro Biao: World Wide WeddingBaro Biao: World Wide Wedding
(2000/02/15)
Fanfare Ciocarlia

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 これが記念すべき初アルバム。

ラジオ・パシュカニラジオ・パシュカニ
(2005/09/14)
ファンファーレ・チォカリーア

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 ぐぐっと洗練の度合いが強まる3枚目、4枚目のアルバムもお勧めですよ。

Iag BariIag Bari
(2001/10/09)
Fanfare Ciocarlia

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Gili GarabdiGili Garabdi
(2005/04/04)
Fanfare Ciocarlia

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Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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