セガワブログ

小説家、瀬川深のブログ。

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 もうずいぶん時間が経ってしまったのですが、ファンファーレ・チォカリーアのライブに行って来ました。 10/11、三鷹市公会堂でのライヴであります。多忙にかまけてすぐにブログの記事を書かなかったことが悔やまれるのですが、本当に素晴らしいライヴでした。


 三年ぶりの生演奏に接したのですが、本当に、嬉しくなるぐらいに、ファンファーレ・チォカリーアは変わっていませんでした。もちろん、いい意味で。BBCのワールド・ミュージック賞を受賞し、いくつもの映画に音楽が使われ、ジプシー・ブラスの中でも抜群の知名度を誇るようになってからも、それでいてなんなんだろう、この嬉しくなるぐらいの揺るぎなさは。ライヴの冒頭、のっそりと現れた四本のチューバがどしんと響くファンファーレを吹き鳴らしたとき、ああ、俺はファンファーレ・チォカリーアの音楽を聴いているんだなあという嬉しさがまず押し寄せてきました。そして、早口のルーマニア語でまくし立てられるMC。こんだけ世界中を回っていても、英語をおぼえてオーディエンスにサーヴィスなどという小賢しい発想はないようです。そのやたらに楽しげな、母音を豊かに響かせるルーマニア語もまた、10年以上前に訪れたルーマニアの土臭い風景が蘇ってきて、嬉しいことこの上ありませんでした。
 それにしてもこの人たち、ちっともライブの作法が変わってないなあ。曲順決めてないんじゃないかと危惧したくなるぐらいにステージの上で喋って、それでいていきなり曲が始まる。「なにもしていないとき」と「楽器を吹き鳴らしているとき」の継ぎ目がまるで分からず、気が付くとそこには音楽の怒濤があるわけです。凄かったですよ。
 大好きな曲はいくらでも挙げられるのですが、中でもいちばん好きな"Asfalt Tango"をまた生で聴けたことは、とりわけ嬉しかったことかも知れません。タンゴといいながら全然タンゴじゃないというこのいいかげんさ。そして、このへんてこな曲名に象徴されているかのごとき、どこまでも歩き続けてゆくかのような音楽。
 残念ながら一つ一つの曲順は思い出せなかったんですが、どの一つを取っても、ファンファーレ・チォカリーアの「すごく自然なんだけど高速」、「なんてことないリズムなのにやたらにビートが効いた」サウンドで貫かれていたことを書いておきます。もちろんそこには散々アドリブが入り、CD収録よりもさらにサーヴィス精神(←重要なキーワードですコレ)効かせまくりの演奏になっているんですが。中でも、"Caravan"は凄かったなあ。あれはもうデューク・エリントンのオリジナルを超えるんじゃなかろうか。ジプシー1000年の放浪の歴史をえいやあと詰め込んだかのごとき爆音のサウンドの向こうには、確かに広大に広がるユーラシアの地平が見えた気がしました。ここでまたオーディエンスの反応が素晴らしかったんですが、下は本当に小学生から上は還暦近いんじゃないかというおじさんおばさんが、それなりに自分なりの方法で踊り出していたんですよね。なんでまたこれだけ広い幅の人間たちがチォカリーア・サウンドに興味を持っていたのかはよく分からないんですが、それだけなにか、人間の音楽に対する喜びを換気するサウンドなんでしょうね。じっさい今回のライヴに付き合ってくれた大切な友人、Izu-changはCDを含めてチォカリーア未体験だったわけですが、やけに自然にライヴの音響に入り込んでいましたもん。この敷居の低さ、包容力のでかさこそが、彼らが変に大向こうの受けを狙わずとも、世界中の人間たちに愛される理由ではないのかな、と、しみじみ思いました。
 あ、ちなみに今回コラボレーションしていたダンサー、アウレリアとクィーン・ハリシュがやたらにステキで、ステージのゴージャス感を倍増させていたことも付け加えておきます。Izu-changは日舞をやっていることもあって、興味津々で眺めておりましたし。面白いのは、似たような踊り方であっても、ルーマニアのアウレリアとインド・ラジャスタンのハリシュとでは微妙に体を動かす作法が違って、それがすぐ目の前で観てみれば鮮やかな対比として感じられることでした。そのへん、ここで書いたことと印象が似ているかも知れません。特にハリシュの「うさんくさい」雰囲気は貴重で、なんか目が引き寄せられるままに、滑らかな曲線をふんだんに含む身体運動に酔っていたことを書いておきます。ちなみに休憩ののち、一曲明らかにヒンドゥスタンに由来する音楽をやったのですが、そのときのハリシュの、水を得た魚のごとき軽やかな動きはきわめて印象深いものでした。人間、本貫の音楽に対しては、ここまで闊達になれるものか、と思わずにはいられない一曲でした。
 そんなこんなでライヴがはねて、ええ、例によってチォカリーアの面々はロビーに出てきて演奏してました。もう、本当にタフだなあ。そしてまた、このアンコールとも言うべき演奏が、やはりいちばん素晴らしいんじゃないかという出来で。ものすごい人だかりに囲まれたチューバをかなたに眺めながら、チォカリーアの生音をかたわらに効いているというのはやけに贅沢な経験だなあと思いながら新譜の"Queen and Kings"を購入。もちろんメンバーにサインして貰いましたとも。またこのへんが実に嬉しくなるぐらい非効率なことをしていて、なんとCDにメンバーのほとんどがサインしてくれるわけです。結果として列は長蛇に連なったのですが、ま、それはどうでもいいことですね。
 セガワはルーマニア語はまったく分からないのですが、唯一知っているルーマニア語で"multmesc!"(ありがとう!)と言うと、びっくりするぐらい喜んでくれました。バーッとルーマニア語で話しかけてくるので、「ゴメンこれしかわからないんだ」というしかなかったんですが。


 それで、結局、拙作「チューバはうたう」は、……マネージャーのヘルムート・ノイマンさんにお渡ししてきました!英文で内容を要約した手紙を作って、「彼らにインスパイアされて小説を書きました」といってお渡ししてきました。とても喜んでくださったようで、嬉しかったです。まあ、つまりは、蛮勇なのですが、後悔はしていないです。
 シカラムータに続き、ファンファーレ・チォカリーアにもお渡しすることができ、本当におこがましいのですが、セガワはこの小説を書いて良かったと思いました。自分を心から喜ばせてくれたアーティストたちに、ささやかな恩返しが出来たという点で。


 その意味では、自分の中でも一区切りが出来たという気分です。
 さあ次の作品だ。長編書いてます。あと一息です。11月中には脱稿の予定です!こう書いとかないとサボるからな!俺は!

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Author:segawashin
2007年、「mit Tuba」で
第23回太宰治賞受賞。
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